豊田で『相続税』なら【税理士法人心 豊田税理士事務所】

税理士法人心

「その他」に関するお役立ち情報

相続税と新型コロナウイルス

  • 文責:所長 税理士 武田彰弘
  • 最終更新日:2024年1月18日

1 相続税の申告期限と新型コロナウイルスの関係

一定の条件を満たせば、新型コロナウイルスの影響により相続税の申告が期限内に行えない場合であっても、相続税の申告期限を延長することができます。

そもそも、相続税の申告期限は、原則、相続開始があったことを知った日の翌日から10か月以内です。

例えば、被相続人が2月1日に亡くなったのであれば、12月1日が申告期限となります。

12月1日が土日祝日であれば、その翌日の平日が申告期限となります。

また、被相続人が2月1日に亡くなったが、亡くなったことを知ったのが、4月1日であれば、翌年の2月1日が申告期限となります。

この期限について、万が一、期限までに申告ができなかった場合、無申告加算税や延滞税、重加算税等といったペナルティーや、税務署から税務調査に入られる可能性があります

そのため、相続税の申告は、10か月の期限内に行う必要があります

しかし、例えば、新型コロナウイルスに感染してしまって、思うように申告書作成に必要な資料が収集できない場合や、相続税の申告を税理士に依頼していたが、その税理士が新型コロナウイルスに感染してしまい相続税の申告書の作成ができていない場合など、一律にこの10か月の申告期限を厳守しなければならないというのは、納税者にとってあまりに酷な場合があります。

そこで、このようなケースを救済するため、例外的に、新型コロナウイルスによる影響など、「災害その他やむを得ない理由」がある場合には、相続税の申告期限の延長が認められる可能性があります。

もっとも、令和5年5月8日以降は、認められない可能性が高いため、安易に申告期限の延長が認められると考えるのは危険です。

なお、相続税の申告に関しては、自動的に期限の延長がされることはありませんので、注意が必要です。

2 期限の個別延長について:令和3年4月15日以前の運用

相続税の納税期限の延長について、令和3年4月15日以前の運用では、申告書に延長する旨の文言を記載するだけで手続きとしては問題ありませんでした。

何か他に申告書とは別の理由説明書等を作成する必要もなく、簡易な方法により、期限延長の手続きが可能でした。

また、期限の延長が認められる理由である「災害その他やむを得ない理由」の有無について、国税庁では、「感染拡大により外出を控えている」ということも理由と認められていました。

この「感染拡大により外出を控えている」というのは、ほぼどの人にも当てはまり、厳密な確認をしようがないように思えます。

そのため、令和3年4月15日以前の運用では、かなり緩い要件で期限の延長が認められていたケースもありました。

3 期限の個別延長について:令和3年4月16日以後の運用

⑴ 新しい運用

しかし、いつまでも令和3年4月15日以前の運用が続くことはなく、期限延長を申請する場合には、期限までに申告等をすることができないやむを得ない理由を具体的に説明しなければならないという運用が、令和3年4月6日に発表されました。

これによると、令和3年4月16日以後の期限延長に関しては、災害による申告、納付等の期限延長申請書に、具体的に個々の状況を記載し、提出する必要があります。

そのため、令和3年4月15日以前の運用のように、申告書の余白等に申告書に延長する旨の文言を記載するのではなく、相続税の申告期限の延長をする場合、必ず、期限延長申請書を提出する必要があります。

⑵ 延長が認められる具体例

以下のような場合は、やむを得ない理由が認められるため、相続税の申告期限の伸長が認められると考えられています。

①納税者や相続税の申告を依頼している税理士が、新型コロナウイルスに感染した場合や感染症の患者に濃厚接触した疑いがある場合、基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある場合などで、保健所・医療機関・自治体等から外出自粛の要請を受けているケース

②納税者などが、現在、外国に滞在しており、ビザが発給されない又はそのおそれがあるなど入出国に制限等があるケース

⑶ 新しい運用では期限の延長が認められにくくなっている

このように、令和3年4月16日以降、相続税の申告期限の延長は認められにくくなりました。

そのため、安易に、期限伸長が認められると考えて申告準備をしていると、期限までに間に合わず、無申告加算税や延滞税等といった重いペナルティーが課せられるおそれがあります

なお、令和3年4月16日以後の運用について、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」の記載からは、「感染拡大により外出を控えている」という記載例が削除されました。

「感染拡大により外出を控えている」という記載例に近いものとしては、「新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが求められ、在宅勤務の体制も整備されていない等の理由から、経理担当部署の社員の多くが業務に従事できないこと」により「企業や個人事業者、税理士事務所などにおいて通常の業務 体制が維持できない状況が生じたこと」とあり、令和3年4月15日以前よりもかなり具体性や客観性が求められ、運用が厳格になっていることがうかがえます。

参考リンク:国税庁・新型コロナウイルス感染症に関する対応等について

⑷ 相続税の申告期限の延長申請をする場合の注意点

相続税の申告期限の延長申請をする場合、納税者各人が行う必要があります。

そのため、相続人の一人が延長申請を出し、他の相続人が出さなかった場合、延長申請を出さなかった相続人には、期限の延長が認められません。

また、期限の延長申請をしても、必ずしも延長が認められるとは限らないため、この点についても注意が必要です。

そのため、万が一、期限の延長が認められなかった場合で、期限を徒過してしまうと、無申告加算税や延滞税等のペナルティーが課せられます。

4 新型コロナウイルスを理由に期限延長を考えていた方は注意が必要です

このように、令和3年4月16日以降、運用が変更し、相続税の申告期限の延長が認められにくくなっています。

特に、令和5年5月8日から感染症法上の位置付けが新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に変更され、同日以降は、政府として一律に感染対策を求めることはなくなりました。 そのため、今後は、ますます新型コロナウイルスを理由に期限の延長は認められにくくなるでしょう。そのため、認められるかどうか分からない期限の延長申請に頼るのではなく、なるべく期限内に申告をしておいた方が安全です。

万が一、ご自身で手続きをしており、相続税の申告期限までに間に合いそうにない場合は、すぐにでも、相続税に強い税理士にご相談されることをおすすめします。

  • 選ばれる理由へ

税理士紹介へ

スタッフ紹介へ